バイオリンの誕生に影響を与えた古楽器がオスマン帝国宮廷で発展した理由

都内で音楽ラボを営む
スワラジのウエダです
いまでは西洋を代表するような楽器
バイオリンやチェロですが

じつはこれらの楽器がでてきたのは
16世紀ごろといわれ

中世の時代に
イベリア半島を長い間支配した
イスラム帝国よりもたらされた
レバブ(ラバーブ)が起源だと考えられています

ヴァイオリンの起源は、中東を中心にイスラム圏で広く使用された擦弦楽器であるラバーブにあると考えられている。ラバーブは中世中期にヨーロッパに伝えられ、レベックと呼ばれるようになった。やがてレベックは立てて弾くタイプのものと抱えて弾くタイプのものに分かれ、立てて弾くタイプのものはヴィオラ・ダ・ガンバからヴィオラ・ダ・ガンバ属に、抱えて弾くタイプのものはヴァイオリン属へと進化していった。

https://ja.wikipedia.org/wiki/ヴァイオリン

バイオリンの発展に決定的な影響を与えたのはリラ(ケメンチェ)

このようにおおくの文献には
イスラム帝国からのレバブ(ラバーブ)が起源としるされています
このレバブは今でもモロッコでアンダルス古典音楽の楽器として
継承されています。

皮張りのボデイに
コマをたてて、
ガット弦を張って
馬のしっぽでギコギコ奏でる

美しい工芸品のような楽器を
私は以前ロバハウスの演奏で弾かせていただいたことがありますが
素朴であたたかい音でした

しかし!

バイオリンに決定的な影響を与えたのは
レバブだけではない

と考えられます。

バイオリンの発展に決定的な影響を与えた
リラ(ケメンチェ)は

ギリシャのクレタ島、トルコのイスタンブール
そしてブルガリアなど
バルカン半島、東ヨーロッパの国、
イタリアの南部などで
民族楽器として受け継がれています。

リラ(ケメンチェ)には
レバブにはない
魂柱(こんちゅう)が組み込まれています

この小さな棒が

弦の振動をボデイ全体に共鳴させる
とても重要な役割を果たしているのです

ケメンチェ(リラ)には

ブリッジから直接、
魂柱が出ているとてもシンプルな構造ですが
これがあるとないとでは、音量においてもおおきな違いがうまれます

イベリア半島からきた
レバブをもとに中世ヨーロッパでは
バイオリンのルーツのひとつと考えられる
レベックが生まれましたが
初期のレベックには
魂柱がなく
リラの魂柱のシステムを
取り入れることで
バイオリンへと発展したと考えられます。

レベック(rebeca, rebecq, rebet, ribeca, rebecum, rabel, rebequin)は、アラビアのラボブに由来する。ヨーロッパでは10世紀頃から知られていたが、芸術音楽に用いられたのは主に中世からルネッサンス期であった。胴体は丸みを帯びた洋梨のような形をしており、一本の木から削り出され、胴体と首の区別がつかないように先細りになっている。指板は響板の一部として盛り上がっているか、上から固定されているが、楽器の正面からの輪郭は変わらない。初期のレベックにはサウンドポストがなく、ペグホルダーは平らです。

Iowa state universityより引用

地中海世界で今でも受け継がれるリラ(ケメンチェ)ファミリー

このように
イタリア以東の地中海世界
バルカン半島やトルコのイスタンブールでは
今でもバイオリンに強く影響を与えた楽器
リラ(ケメンチェ)は受け継がれています。

1クラシックケメンチェ Classic Kemence
2黒海ケメンチェ    Karadenis Kemence
3共鳴弦リラ      Lyra with Sympathetic strings
4クレタンリラ     Cretan Lyra
5リラキ        Lyraki
6ガドルカ       Gadulka
7ケマネ        Kemene
8リジェリカ      Lijerica
9カラブリアンリラ   Calabrian lira

イタリア南部やアドリア海に面した
クロアチアからブルガリアなどバルカン半島の地域では

軽快に奏でて
ダンスの伴奏楽器のような
使い方が多く見られます


ギリシャのクレタ島を代表する民族楽器は
クレタンリラとよばれて
同じように踊りの伴奏楽器として受け継がれてきましたが
90年代にロスデイリーやステリオスペトラキスにより
共鳴弦リラが開発されて
民族楽器の世界に発展的な影響をあたえました😌

トルコのイスタンブールでは
オスマン帝国時代に
ギリシャ系の人々の間で受け継がれ
優美な宮廷音楽の楽器クラシックケメンチェとして発展しました

オスマン帝国の瓦解のあと
この楽器は
トルコ領内からギリシャへ移り住んだ
ギリシャ人にも受け継がれて
ポリテイキリラ(コンスタンティノープルのリラ)と呼ばれています

クラシックケメンチェはルーミーケメンチェ
(ローマ人のケメンチェ)ともよばれ
東方的に床に座らずに椅子に座って奏でるのをみても、トルコ民族がアナトリア半島に進出する以前から中世の時代から長くこの地域に存在していたのを物語っているようです。


中世の時代に東地中海地域を支配していた東ローマ帝国の代表的な楽器だったという記述もペルシャ人の学者により文献が残されています

弓を使ったリラに関する最初の記録は、9世紀にペルシャの地理学者Ibn Khurradhbih(d.911)が残したものである。9世紀にペルシャの地理学者Ibn Khurradhbih (d.911)が、辞書的な楽器論の中で、ウルグン(オルガン)、シリヤニ(ハープや竪琴の一種)、サランジュ(バグパイプ)とともにビザンチンの代表的な楽器としてライラ(lūrā)を挙げている[2]。 アラビア語のレバブとともに、ライラはヨーロッパの弓奏楽器の祖先と考えられている

https://en.wikipedia.org/wiki/Byzantine_lyra

いろいろあるけど、どのリラがオススメなの?

こうしてみてきたように
実にいろいろな地方で
バイオリンの発展に大きな影響を与えたリラ系の楽器が
みられますが、

数ある、リラ系の楽器の中でも
イスタンブールのケメンチェ(ポリテイキリラ)
おすすめな理由があります😌

  • 長い間オスマン宮廷で洗練され体系化されている
  • リラ属の中でももっとも小さく持ち運びカンタン
  • 音量もさほどおおきくない
  • バイオリンに比べて値段も安価

という理由があげられます


オスマン帝国の宮廷で発達した
クラシックケメンチェは
宮廷の庇護のもと、音楽を専門とする人々の間で
受け継がれてきたので
難易度においては他のリラに比べて高いかもしれません

それでも
ちいさいのにとても奥が深い
イスタンブールリラ(ケメンチェ)の世界は
人生100年の時代に
生涯を通じて学びつづけることができる
深遠な世界です。

こちらの楽曲は
ギリシャのリラ(ケメンチェ)奏者
フランスのチェロ奏者
ペルシャの打楽器奏者
の異色のコラボレーション、
実は2018にも来日しておられました😊

東ローマ帝国の遺産リラは
オスマン帝国の宮廷音楽の楽器として発展して
帝国の瓦解のあとも
こうして現代の音楽家により
受け継がれています

ちなみに、
イスタンブールの古典学派の方たちは
みなさん、昔ながらのガット弦(ひつじの腸)の弦を
つかっているのですがギリシャのリラ奏者の多くは
チェロの弦(金属弦)をつかっています。

イスタンブールには今でもこの楽器を作る工房があり
直接工房に発注しても郵送してくれます😌

スワラジ音楽ラボでは
初心者向けのケメンチェ教室も運営してますので
気になるところがありましたら、何でもお聞ください。


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